軍法会議(1955)THE COURT MARTIAL OF BILLY MITCHELL
〈ビデオ解説より〉
「或る殺人」「情婦」、「十二人の怒「れる男」、「評決」、国産の「事件」などを挙げる迄もなく、法廷シーンの多い映画によく出来たものが少くない。軍事裁判では「ケイン号の叛乱」と本作商品が優れている。裁判ものは演出と役者の巧拙がモロに出るため、入念な人選がプラスの効果をもたらすと言えるだろう。日本はこの映画に間接的な関わりを持っており、その意味で食指を動かされる。1941年12月8日、日本海軍はハワイの真珠湾奇襲攻撃を行ない停泊中の太平洋艦隊に大打撃を与えた。「リメンバー・パール・ハーバー」なる合言葉が生まれ、同名のポピュラー・ソングも作曲されてヒットした。ところが驚くなかれ、1920年代初頭に日本軍による真珠湾攻撃を予言した人がいた。アメリカ空軍の先覚者ビリー・ミッチェル大佐が張本人である。作戦を無視した行動をとった陸軍航空隊のミッチェル大佐(ゲーリー・クーパ-)は、テキサス州のヒューストン基地へ追いやられた。確固たる信念を持っている彼は、この土地の新聞に当局を批判したコメントを発表した。これがワシントンにある本部の気に触れ、ミッチェルは軍法会議にかけられた。演出のオットー・プレミンジャーは裁判に至る迄を丹念に見せ、軍法会議のシーンにたっぷり時間をかける。ここが最大のヤマであり、見せ場でもある。すっかり心得ているプレミンジの腕が一段と冴え、見る者を釘づけにする。ガスリー将軍(チャールス・ビックフォード)を筆頭にこわもての軍人が居並んで、審議が始まる。各人が切れ味のよい演技を披露。まさに映画の醍醐味である。フランク下院議員(ラルフ・ベラミー)がミッチェルの弁護を買って出るが、状況は好転しない。ずるい手段でじわじわと苦しめぐるアラン大尉になるロッド・スタイガ一、思い入れたっぷりの好演だ。クーパーは苦境に立たされた役を見事に演じ、軍服がよく似合う。ミッチェルに不利な判決となったが、彼の予言は的中した。
監督:オットー・プレミンジャー
脚本:ミルトン・スパーリング/エメット・ラヴァリー。
出演:ゲーリー・クーパー
チャールス・ビックフォード
ロッド・スタイガー
エリザベス・モントゴメリー他
1955年アメリカ映画/1956年日本公開
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